100%の自己受容は可能か?自分を深く知るためにまず最初にすべきこと
私たち一人一人は、自分自身を完全に受け入れることができるのでしょうか?
この質問に答えを求める中で、私は芥川賞作家 平野啓一郎の「分人主義」とアメリカの心理療法家 アルバート・エリスの「自己受容」の理論に出会いました。
これらの異なる視点が、自分自身を深く理解し、真の自己受容に向かう手助けとなることを信じています。
自分を深く知ることは、自己受容の第一歩。
このブログを通して、私たちが持つ「もう一人の自分」を受け入れ、真の自己受容への道を一緒に探求していきたいと思います。
Table of Contents
分人主義とは? - 平野啓一郎の視点
私たちが「自分」と認識しているものは、常に一貫しているわけではありません。
場面や状況、相手によって異なる「自分」が現れることは、多くの人が経験していることでしょう。
友人の前では楽しく騒げる自分、家族の前では優しい自分、職場では真面目で頼りにされる自分…。
これらはすべて「自分」という存在の中にあるものですが、一体どれが真の「自分」なのでしょうか?
こうした疑問を解決するヒントとして、芥川賞作家 平野啓一郎氏が提唱する「分人主義」が注目されています。
分人主義とは、一人の人間の中に複数の「自分」が存在し、それらが状況に応じて前面に出たり引っ込んだりするという考え方です。
平野氏によれば、日本人は特にこの「分人的な自己認識」を持っており、一つの固定された自己像にとらわれることなく、流動的に自己を捉え直す能力が高いと言います。
この考え方は、自己を一つの固定したものと捉える西洋の「個人主義」とは大きく異なります。
個人主義が「私は私、変わらぬ存在」という一貫性を重視するのに対して、分人主義は「私は状況や相手によって変わる、多面的な存在」と捉えます。
この視点からすると、自己矛盾や葛藤も、異なる「自分」同士の交流と捉えることができ、より寛容に自己を受け入れる手助けとなります。
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アルバート・エリスの自己受容の理論
アルバート・エリスは、認知行動療法の先駆けとして知られる心理学者であり、彼の提唱するREBT(Rational Emotive Behavior Therapy:人生哲学感情心理療法)は、
私たちの感情や行動が「物事のとらえ方」によって大きく影響されるという考えを中心に据えています。
エリスの理論の中で特に重要なのが「無条件の自己受容」の概念です。
これは、自分自身の存在や価値を、行動や成果、他者の評価とは無関係に受け入れる考え方を指します。
つまり、失敗した時、誤った選択をした時、他者に批判された時でも、自分の価値は変わらないという信念を持つことです。
エリスは、多くの人が「自分は〇〇であるべきだ」という条件付きの自己評価を持っていると指摘します。
例えば、「成功しなければ価値がない」とか「みんなに好かれなければいけない」といった考えです。
しかし、これらは非現実的であり、自己評価を過度に下げる原因となるとエリスは警告しています。
その代わりに、彼は「私は完璧である必要はない。失敗や過ちを犯すこともあるが、それによって私の存在や価値が低下するわけではない」という考え方、
すなわち無条件の自己受容を育てることの重要性を強調しています。
このような考え方は、自己の欠点や不完全さを受け入れ、それにも関わらず自分を大切に思うことを可能にします。
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分人主義とエリスの自己受容:共通点と違い
平野啓一郎の提唱する分人主義とアルバート・エリスの自己受容理論。
一見異なる二つの思想ですが、実は多くの共通点を持っています。
一方で、それぞれの背景や核心には違いも存在し、それがどのように私たちの自己受容や自己認識に影響を与えるのかを考察します。
共通点: 両者とも、自分自身の内部に複数の「自分」が存在するという考えを共有しています。
平野の分人主義では、私たちの内部には様々な「分人」が存在し、それぞれ異なる役割や特性を持つと説明されています。
エリスの理論でも、私たちは多くの異なる感情や思考、行動を持っており、それぞれが私たちの状況や背景に応じて変化すると考えられています。
違い: 平野の分人主義は、主に文化や社会との関わりを中心に私たちの「自己」を考えるアプローチを取っています。
それに対して、エリスの自己受容理論は、個人の思考や感情の側面から自己を捉える方法を提案しています。
また、エリスは無条件の自己受容を強調するのに対し、平野はそれぞれの「分人」が持つ独自性や価値を受け入れることの重要性を強調しています。
つまり、エリスは「全体の自己」を無条件で受け入れることを提案しているのに対して、平野は「部分の自己」の多様性や共存を前提としています。
自己受容のための最初の一歩:分人主義とエリス理論より
自己受容の旅は単純ではありません。それは日常の中での絶え間ない挑戦として現れることが多いです。
しかし、分人主義とエリスの自己受容理論をうまく組み合わせることで、私たちの日常に新たな視点や方法をもたらすことができます。
- 分人の認識
日常の中で私たちが感じるさまざまな感情や反応は、平野の「分人」として捉えることができます。例えば、怒りっぽい自分、理解しようとする自分、避ける自分など、様々な分人が存在します。これらを認識し、分人の存在をあなたの一部として実感することがまず最初の第一歩です。 - 嫌な分人への対処
自分の中の様々な分人を実感できたら、エリスの提唱する「無条件の自己受容」を行ってみましょう。
元々「無条件の自己受容」とはどんな状況や感情、反応があろうとも自分自身を否定しないという考え方です。
これを日常に取り入れることで、自分自身を罰することなく、より建設的な思考や行動へと導くことができるとエリスは説きます。
一方自分の中にいる様々な分人が存在するの事は既にあなたは実感済みですよね。
分人の中にはあなたにとって存在を認めたくない分人、恥ずかしく存在を他人には隠したい分人がいませんでしたか?
そんな分人を見つけてしまったあなたは
「あ~、イヤだ。あんな分人いなくなればよいのに」
と思ったかもしれません。
しかし、そんな自分人もあなたの一部。
あなたという船に一緒に乗り込んでいる乗客なのです。
嫌いであっても呉越同舟の分人を無理に変えようとしたり、ましては消そうとするのはもっての他なのです。 - 分人との対話、そして「無条件の自己受容」の実践
分人を認識し、受け入れたら、それぞれの分人との対話を試みましょう。
これは自己理解を深める手段として有効です。
例えば、「今、怒りっぽい自分が前に出ているな」と気づいた時、その分人に「なぜ怒っているのか?※」と問いかけ、理解を深めるのです。
そうする事で嫌いな分人を少しずつ受け入れていく事 つまり「無条件の自己受容」が可能となるのです。
※なぜ怒っているのか?
それを理解する上でREBTのABC理論が役立ちます。
ABC理論の詳細はコチラを参照ください。
まとめ:分人主義とエリス理論を通じた深い自己理解へ
私たち一人一人は多面的な存在であり、さまざまな感情や思考、反応が内部に存在します。
平野啓一郎の分人主義は、この多面性を認識し、受け入れる方法として役立ちます。
一方、アルバート・エリスの自己受容理論は、その多面性を否定することなく、自分自身を深く受け入れる手助けをしてくれます。
結果として、これらの理論を組み合わせることで、私たちは自分の内面をより深く理解し、より健全な自己受容を築くことができるのです。私たちの感情や反応は、時には理解しにくいものもありますが、それら全てを受け入れ、理解することで、真の意味での自己受容へと近づけるのです。
最終的に、分人主義とエリス理論を組み合わせたアプローチは、私たちが自分自身との関係をより豊かにし、日常生活の中でのさまざまな挑戦や困難に立ち向かう力を与えてくれます。自己受容は一度得たら終わり、というものではなく、絶えず進化し続けるもの。しかし、この二つの理論を手にすることで、その旅は少し楽に、そしてより意味深いものとなるでしょう。