自己受容とは何なのか? 20世紀を代表する心理療法家 アドラー エリス ロジャースそれぞれの視点

私たちが日常で直面するさまざまな課題や困難。
その中で、自分をどれだけ理解し、受け入れることができるかは、心の健康や生きがいを感じる上で非常に重要な要素となってきます。特に現代社会では、SNSやメディアを通じて他者と自分を比較する機会が増え、時として自己価値を見失いがちです。そんな中で、自己受容と自己肯定は私たちの精神的なアンカーとなる存在です。

「自己受容」と「自己肯定」。
これらの言葉は似ているようで、実際には異なる意味を持つものです。しかし、それぞれの違いや意味を正確に把握することは意外と難しいもの。このブログでは、その違いを明確にし、さらに心理学者アドラーエリス、そしてロジャースの視点から見た自己受容の考え方の違いを探る旅に出かけます。

私自身も日常で自己受容や自己肯定に関する葛藤に直面することが多く、これらの概念を学ぶ中で得た洞察や理解を共有したいと考えました。それでは、一緒に自己受容の深い世界へと足を踏み入れてみましょう。

自己肯定と自己受容: 何が異なるのか?

自分を好きになること、自分の価値を認めること。
このような感情や認識を「自己肯定感」と言います。

私たちが幼少期から育ってくる中で、親や教育者、友人たちから受ける評価やフィードバックが、この自己肯定感の形成に大きく影響を与えます。自己肯定感が高い人は、挫折や失敗に直面したときでも、自分自身を信じる力を保持しています。

一方、自己受容は少しニュアンスが異なります。
自己受容は、自分の良い部分も、そうでない部分も、全てを認識し、そのままの自分を受け入れる姿勢を指します。完璧である必要はなく、自分の欠点や過去の失敗も含めて、自分を許し、受け入れること。これが自己受容の本質です。

一見、これらは似ているように感じるかもしれませんが、自己受容は自己肯定感を持つことを前提とせず、あるがままの自分を認識し受け入れることを重視します。次章では、これらの違いがどのように私たちの心や行動に影響を及ぼすのかを詳しく探求していきます。

アドラーの視点: 自己受容の源泉

アルフレッド・アドラーは、人間が共同体の中で生きる存在として、社会的な関係性の中で自己意識や自己評価を形成していくという考え方を持っていました。彼の説く「共同体感覚」は、他者との関係の中で自分を受け入れ、他者を受け入れることの重要性を強調しています。

アドラーにとって、自己受容は他者との関係性の中で生まれるものであり、孤立や分離を感じることなく、社会的な共同体の一員としての自分の位置を確認し、それを受け入れることができる状態を指します。また、他者との関係性を通じて、自分自身の欠点や弱点を認識し、それでも自分を受け入れることが、真の自己受容へと繋がるとアドラーは説明しています。

しかし、アドラーの理論には、自己受容だけでなく、自分と他者との関係の中での「劣等感」と「優越感」のバランスも大きなテーマとして存在します。これらの感覚は、自己受容の障壁となることも、またそれを深める手助けとなることもあります。

エリスの視点: 無条件の自己受容

アルバート・エリスは、認知行動療法の先駆者として、人々の不健康な感情や行動の背後にある不合理な信念を矯正するアプローチを提唱しました。その中で彼が重視したのが、「無条件の自己受容」です。

エリスによれば、多くの人々は「自分は常に成功しなければならない」「他人に認められなければ価値がない」といった、絶対的な「べき」に基づく信念を持って生きています。これらの厳格な基準が自己評価の原因となり、自己否定や自己批判の感情を引き起こすことがあるのです。

エリスはこのような不合理な信念を挑戦し、それに代わる新しい健全な信念を形成する方法を提案しました。そして、それは「私は完璧である必要はない」「私は失敗しても、それは私の全人格を否定するものではない」という考え方です。これが「無条件の自己受容」の核心であり、自分の欠点や失敗を認識し、それにもかかわらず自分自身を受け入れることを意味します。

エリスのアプローチは、自己受容を増進するための具体的な手段としての認知の再構築や自己対話の技法を提供しています。自己受容は、自己評価のプロセスを変えることで、より健全で平和な心の状態へと導く鍵となります。

ロジャースの視点: 真の自己と条件付きの愛

カール・ロジャースは、人間中心療法の創始者として知られ、心理療法の分野に革命をもたらしました。
彼の考え方の中核には「自己概念」と「条件付きの愛」があります。

ロジャースにとって、人は生まれながらにしてポジティブで成長を志向する存在です。しかしながら、社会や家族、特に子ども時代の経験によって「私はこうでなければ愛されない」という条件付きの愛のメッセージを受け取ることが多いのです。このようなメッセージは、自己概念の歪みや自己否定の原因となり得ます。

ロジャースは「真の自己」の発見とその受容が心の健康に至る鍵だと考えました。真の自己とは、他者の期待や社会のプレッシャーから解放された、自分自身の真実の姿を指します。自己受容のプロセスは、この真の自己を受け入れ、外部からの評価に左右されず、自分自身の価値を見つけることから始まります。

ロジャースの療法の中心には、クライエントが真の自己を発見し受け入れる手助けをする「無条件の肯定的関心」があります。これは、審判や評価を行わずに、他者を受け入れる姿勢を指します。このような関係性を通じて、クライエントは自己受容を深め、より健全な自己概念を築き上げることができるのです。

アドラー、エリス、ロジャース: 自己受容の考え方の比較

自己受容の概念は心理学の分野において長い間議論されてきましたが、アドラー、エリス、ロジャースという三人の偉大な心理療法家が異なるアプローチでこれを捉えています。それぞれの視点から自己受容の核心を再確認し、その違いと共通点を探ることで、私たちが自己受容を深める手助けとなる洞察を得ることができるでしょう。

  • アドラーの視点: アドラーは共同体感覚を基盤に自己受容を語ります。彼にとって、他者との関係性の中での自己受容が非常に重要です。彼はまた、劣等感から優越感を追求する過程での自己受容の重要性も指摘しました。
  • エリスの視点: エリスのRational Emotive Behavior Therapy (REBT) は、不合理な信念を変えることで自己受容を深めるという考え方を持っています。彼は外部の評価や他者の期待から自由になり、自らの存在と価値を認めることが真の自己受容であると主張します。
  • ロジャースの視点: ロジャースは真の自己の受容を中心に語られます。彼の理論では、他者からの無条件の肯定的関心が自己受容を促進すると考えられています。これは自分自身を非難や評価から解放し、自分の真の姿を受け入れる過程として捉えられます。

これら三者の視点を総合すると、自己受容は自分自身の真実を理解し、それを認め、その上で他者との関係性の中で育むものと言えます。それぞれの理論は異なるアプローチを持っていますが、その根底には「自分を受け入れる」という共通のテーマが流れています。

日常における自己受容の実践

自己受容の理論を学ぶことは非常に重要ですが、それを日常生活に適用していくことが実際の変化と成長をもたらします。アドラー、エリス、ロジャースの考えを元に、私たちがどのように自己受容を日常に実践していけるのかを探ります。

  • 共同体感覚を大切に: アドラーの共同体感覚の考え方を日常に取り入れるには、他者との関係を意識的に築いていくことが鍵です。小さな行動から、人とのコミュニケーションを大切にし、相手を尊重することで自己受容も深まります。
  • 不合理な信念の再評価: エリスのREBTの考え方を元に、日常の中での自分の不合理な信念や考え方を見つけ出し、それを再評価することで、自己受容を促進することができます。
  • 無条件の自己受容: ロジャースの考えを実践するには、自分自身の存在を無条件で受け入れることが大切です。自分の欠点や過去の選択を後悔せず、その一部として受け入れることで、真の自己受容が生まれます。

また、自己受容の実践のための具体的なステップとして、自分の感情や考えを日記やジャーナルに書き留めることも有効です。これにより、自分の考えや感情を明確にし、それを受け入れやすくなります。

最後に、他者との対話や共感を通じて、自己受容を深めることも忘れてはなりません。他者の視点や感じることを理解することで、自分自身の受け入れがより深まるのです。

まとめ

いかがだったでしょうか?

アドラー、エリス、ロジャースそれぞれとらえ方は違いますが、自己受容の重要性を明らかにしています。あなたも3人のとらえ方の中で気に入った所から自己受容を考えてみてはいかがでしょうか?

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